コトバ、その二

言葉って難しいものだ。

このブログの初投稿を書くにあたっても、いろんな迷いがあった。

まず何語で書くかという問題。私が比較的自由に書ける言語だと、日本語、韓国語、英語があるが、他人を読み手として想定しない場合(例えば、誰にも見られない日記をつける時とか、仕事や授業中にメモをとるような場合)、私はこの三つの言語を「何となーく」選び、時には一つの文章の中に全部混ぜて使ってきた。安全基地を確保するという明確な目的のもとTwitterでの使用言語を意識的に切り替えた時とは違って、日常の中での私のコトバは、半ば無意識に選ばれた言語で綴られた。

無意識とはいえ、その都度表現したい内容によって、最もしっくりくる言語媒体を選んできたつもりで、その「しっくりさ」には理由があったはず。でも、私が何を表現するとき、どの言語が特にしっくりくると感じるかについて、あまり考えたことはなかった。プライベートでは韓国語、ソーシャルな場面では日本語、という分け方でも全然なかったのは、家族を離れて日本で暮らした18歳からの計12年間の生活の中で、頼れる韓国人の友達が近くにいた時期はほんの一部だったから。特に、日本での生活初期には、日本人友達どころか、韓国人友達も少ない中、当時私の生活世界の全てだった大学コミュニティ(そしてそのコミュニティを構成するのは99%日本人、しかもその8割が男性という特殊な環境)が唯一期待できる便りだったため、最初はいくら拙かったとはいえ、私が感じていること、思っていることを、日本語でうったえていくしかなかった。まだ人格が完成していなかった10代の終わりから20代の全てを、そのような特殊環境で暮らしたせいで、日本語は私にとってもはや外国語というより、第二の母語になってしまっていた。

本題に戻して、私にとって、どういう時に何語が一番しっくりくるのかというと、正直未だよく分かっていない。韓国語や日本語ほどの自由さではないかもしれないが、英語が一番しっくりくる時も確かにあって、最近だとなぜか独り言が英語になっていたりする。幼少期から、音楽や映画などの文化コンテンツは、日本語クラスだった高校時代を除き、日本のものにも韓国のものにもあまり興味がなかった。なぜ日本に来たかという、日本に来てから何百回も聞かれた質問の期待に応えられない理由もここにあった。音楽は洋楽、映画は洋画ばかり見ていた子供だったから。一方で、英語圏で長期留学した経験は皆無だし(文科省の奨学金を辞退した後やっと、約2ヶ月間UC Berkeleyでのサマーセッションに参加したのが、今のところ最初で最後)、そもそも人生で英語圏で滞在した期間は、旅行まで全部合わせてもギリ6ヶ月を超えるくらいだと思う(誰もあまり信じてくれないが)。それでも、私の語学好きとしての歴史は、英語を学ぶことと共に始まったと言っても、たぶん過言ではない。そもそも韓国と日本で暮らしてきた今まで、日常では英語を頻繁に使う機会が与えられなかったからこそ、英語で話すとき、私の日本語ペルソナと韓国語ペルソナから解放される快感は、何にも代え難いものだった。日本語世界の私と、韓国語世界の私、どちらからも距離を置いて、その両方にまたがっている自分に声をかける時(だいたい独り言をいう時で、自分への慰めや応援の言葉が多い)、英語は便利な繋ぎ線になってくれた。日本語と韓国語が一番しっくりくる場面がいつなのかがはっきりしないのに対して、英語は使う場面がまだ限られていたせいなのか、比較的はっきりしているのかもしれない。

上でペルソナと呼んだが、どの言語を媒体として選ぶかがなぜ重要かというと、私には私が使う言語によってペルソナが多少変わる感覚があるからだ。それは、言語そのものに内在する文化的コードから、それを使う私と私のコトバも影響を受けるからで、一方では、特に日本語と韓国語の場合、その言語を通じて体験した世界と、そこで蓄積された経験に、私が表現する内容が影響を受けるからだと思う。だから、どの言語でブログを書くかという問題は、私が、私のどの経験に優先的に接続したいかを決めることでもあった。ブログを始めるにあたって、まずは日本語で書き始めたことには、理由がある。日本語世界で生きてきた自分を、いくつかの世界にまたがっている私の一部として受け入れ、それらをしっかり繋ぎたい

でも、今まで無意識にそうしてきたように、あまり一つの言語に縛られたくもない。Naverブログ(※韓国で普遍的に使われるブログプラットフォーム)でも、はてなブログでもなく、Squaresapceにブログを作った理由には、それもある。そもそも、何かを伝える目的より、自分のコトバを整理する目的の方が大きいので、読者の使用言語にはあまり配慮せず、気ままに、言語媒体も「なんとなーく」選んで書いてみたい。

大まかな設定はこれで決まったので、ここからはコトバに任せるつもり。ここまで書いたのに、この日本語のtone and mannerがしっくりこない(気持ち悪い)ので、今後試行錯誤しながら重さ調節していきたい。

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